浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
涙が止まらない私は、手を引かれて木嶋さんのマンションへと連れてこられた。
悲しさのあまり、
知らない男の家に連れ込まれるなんて危険な事をしてしまっている。
というより、どうでもよかった。
誰かに優しく慰めてほしかった。
それが、自分の体を無下に扱う事だったとしても。
木嶋さんはようやく涙を止めた私を革のドでかいソファに座らせ、ローテーブルにペットボトルの水を置いた。
その水の横にはデスクトップのパソコンが2台並ぶ。
床には雑誌や少女漫画が散らばっていた。
それをぼんやり見ながら、泣いて渇いた喉を冷たい水で潤した。
「ちょっとは落ち着いた?」
「……はい。取り乱して、すいません……でした。」
きっと酷いことになってるだろう自分の顔に手の平を当てた。
「何かあったんだろうけど……今日は何にも考えずに眠ったら?」
あれ?眠らせてくれるんだ。予想外の対応に驚く。
「あーーいえ、帰ります、洗面所貸してください。」
「洗面所はそこ……」
指を指された方向に気だるげに立ち上がり、扉を開ける。
乱暴に何度も顔を洗い、そこにあるタオルで軽く拭いた。
目の前にある鏡に映る自分を見て驚愕する。
なんて……なんて……ブサイク。
泣き晴らした28歳の顔なんて見れたもんじゃない。
目の上も下も赤く腫れ上がり、化粧が落ちた顔は青白い。
お化けか……
自分の顔の酷さに驚いて、そうしてある考えにたどり着く。
私が優に愛されるなんて、やっぱり幻だわ。
その考えは恐ろしく後ろ向きでひねくれたものだったけれど、私の心の底にストンと収まった。