浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
慌てた足音とゆっくり閉まった玄関ドアの音。
それが完全に聞こえなくなった後、恐る恐る元に視線を戻す。
案の定、木嶋さんの表情はさっきの腕と同じく固まっていた。
私はそっと木島さんから離れて何となく身なりを整えた。
「あの……もしかして……」
「ハッ……彼女……」
大きく息を吸ったようで、肩が上下した。
ひーえー!
マズイじゃないですか、私!
完全に浮気相手だわ!
「あ、あの!私、説明してきますんで!」
「あ-…いいよ……俺が後で……」
「後!?何言ってるんですか!こんなこと後回しにしたらダメですよっっ!」
立ち上がって木嶋さんに向かって人指し指を突き付けた。
「……え、そうなの?でも俺としては濡れ衣を晴らすだけ……」
「バカなの?バカなのね?木嶋さん。濡れ衣だろうが何だろうが、こんなときに追いかけてこない男の言い訳なんか信用できるわけないでしょっっ!今すぐ行って来いっっ!」
「え、えっ?」
まだ座ったままの木嶋さんの腕を無理矢理取り、引っ張った。
「でも、俺と彼女はもう何年も付き合って……」
「はぁっ?何年も付き合ってる彼女が逃げたんだよ!なおさら悪いわ!早く行けっつーの!」
あまりにもモタモタしている木島さんの背中を足で蹴った。
「留守番してますから!早く!」
私ができる最高の怒り顔で睨み付け、木島さんを追い出した。
初めは急ぐ様子もなかった足音が徐々に速くなり、消えた。