浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)

疲れたような木島さんが、帰ってきた。

「……会えましたか?」

目が合うとすぐに掛けた私の質問に彼は力無く答えた。

「会えなかった」

冷蔵庫を開けて水を一気飲みする木嶋さんの服は汗がびっしょりで背中に張り付いている。
猫背気味の背中を丸め、肩を落としているように見える。

「いろいろ行ったけど……あんまり思い当たる場所が無くて……」
「……そうですか……」

疲れて憔悴している木島さんを見ると、ものすごく責任を感じる。

「あ!じゃあ、電話してください!私が話しますから!」
「いや、もちろん電話もしたよ。だけど着信拒否された。」
「着信拒否……あ!私の携帯から電話したら……」
「ありがと。でもいいよ。」

木島さんは、私に気を使わせまいと弱い笑顔を向ける。

「俺、彼女のこと何にもわかってなかった」
「……え?」
「彼女が逃げ込みそうな所。自宅と会社と行ったけどそこには居なくて。他には考え付かなかった。」

「…………」

「俺、恋人失格だよなぁ」

ハハハとまるで他人事のように笑った。

確かに何年にも渡る恋人同士なら、行く場所なんてある程度想像はつくだろう。

だけど、恋人だからってなんでも知ってる訳じゃない。
私だって優の婚約者でありながら彼の考えてることは未だに掴めていない。

なぜ他の女の人と自宅にいたのか、抱き合っていたのか、子供を作るような……

「あぁぁっっ‼」
自分の想像を否定したくて大声を上げた私に、木島さんは仰け反った。

「どっっ!どうした?!」

何かの発作かと思ったのか、驚いたまま固まっていた。
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