浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)

「あ、すいません。あの、私いつでも説明しますので、彼女さんと連絡とれたら電話してください。」

そう言って連絡先をその辺のメモに書いて渡した。
驚いたまま受け取った木嶋さんの顔はかなり滑稽だ。

「……ありがと。でも多分大丈夫。」
「それは過信ですよ。ほんとに遠慮しないでくださいね。私のせいなんですから。」
「ハハハ。でもやっぱり俺が悪いよ。もともと俺は信頼ないから。」
「……え?そうなんですか?」

あんまり浮気しそうなタイプではないけど。
男前でもないし、まぁ人懐っこいけど。

「うん。浮気が……とかじゃなく、一緒に仕事してるとそっちがメインになっちゃって、あんまり恋人って感じじゃないから。」

「一緒に仕事……」
「彼女、俺の上司。」
「えぇっっ!」
「そんな驚くこと?」
「いや、よくある話ですよね……」

ズキンと胸が痛む。
優と真理子さんもそうだ。
一緒に仕事してるとお互い尊重し合うようになって、価値観やほとんどの生活を共有する。
そこから恋愛に発展するのもよくあることだ。

「俺は彼女を尊敬してる。そして俺のことも尊重してくれる。多少の無理は言うけど、俺が絶対やりたくない事は避けてくれる。だから俺は期待以上のモノを作る。ずっとそうやってやってきたんだ。けど」

「けど?」
「会社の規模が拡大して、彼女のお気に入りが増えていくに連れ、俺の存在はその一つになった。だから俺は必死なんだけどさ。」

そう言ってパソコンの画面を指で弾いた。

「なかなかね~上手くいかない。新しいことにチャレンジしたら行き詰まった。」

「恋愛シミュレーション、ですか。」

「そうそう。今さら止められないしね~。止めて他のやつに続きを取られるのも嫌だしね。」

ちゃんと恋愛してたんだ、木島さんは。
適当に彼女をキープしてるだけだと思ってた。
釣った魚に餌やってないんだろうな、と。

同じぐらいの歳の男の人が恋愛に四苦八苦してて、それはとても好感が持て、私の心を温めた。

「頑張って、木島さん。絶対伝わるよ。」
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