浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
解ける疑惑
重い荷物はさらに重く感じる。
私は手足を引きずる思いで自宅を目指す。
「メロスはこんな気持ちだったのか」
なんてバカなことを思いながら。
そんな風にチャラけてないと、家までたどり着けそうになかった。
それでもなんとか玄関まで歩き、疲れきって鍵を取り出した。
「ん?」
いつもと同じ方向では回らず、反対に回すとカチッと音がした。
深く考えず、ドアノブを引くけど開かない。
まさか、私、開けっぱなしで出ちゃった?
もう一度鍵を回して開けた。
すると、そこには麗しい婚約者さまが立っていた。
「す、すぐ……る……?」
「やぁーっと帰ってきた。」
まだ来ないだろう優がそこに居る事に、心臓が踊り始める。
トキメキなのか、驚きなのかはもはや解らないが。
「あ、来てたんだ……」
「早く終わらせて、来ちゃった。」
テヘッと笑う優は女子高生のように可愛らしい。
そして、私の持っていた重いスーパーの袋たちをさっと奪い取り、冷蔵庫の前に置いてくれた。
「あ、ありがと。あとはやるから。」
優に背中を向けて、冷蔵庫を開けた。
一心に冷蔵庫へ収納する振りをして、神経は背中に集中する。
わざわざ会いに来てくれた恋人への挨拶もそこそこに用事をしようとする私の背中を優は見ていたようだが、しばらくするとリビングへと座りに行ってしまった。
落ち着け。
落ち着け、私。
ちょっと時間が早まっただけじゃないか。
スーパーの袋が空になって、特別やることが無くなった私は、コーヒーメーカーのスイッチを押す。
「コーヒー、飲むでしょ?」
出来るだけ冷静に。自然体で。
マグカップを優に見せた。