浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
優は私をじっと見つめたまま、訝しげにこう言った。
「透子、いいからこっち来て。」
自分が座っている隣をポンポンと叩いた。
「や、でも、疲れてるでしょ?ご飯もまだちょっと早いし。あ!それとももうご飯にしようか?今日は……」
「いいから。ここに来て座って。」
射抜くような視線で見つめる優を見返したとき、悟った。
あぁ。ここで終わりか。
ご飯もコーヒーすら一緒に楽しむことも無いんだ。
ジ、エンド。
幕が降りようとしている。
私は覚悟を決めて、優の隣ではなく、ロ―テーブルを挟んだ前に座った。
すると、優は不服そうに顔を歪めた。「横に来てほしかったんだけど……ま、いっか。」
「…………」
「なんかこの間からおかしくないか?」
「…………なにが?」
「まずは、嘘ついたこと。実家に居るって言ったのに……ゆかりさんの家に居たっけ。」
「あ、あれは…………さすがにいろいろあった元カノの家に居たら、優はイヤかな、と……」
「嘘つかれる方が嫌だけど。あの店にも行ってた……んだよな?」
「…………」
「知ってたよ。でも、俺は平日は一緒に居られないから、そこは目を瞑ってた。」
「!『目を瞑ってた』って!な、何よ!私がどこで飲んでたっていいでしょう?」
「まぁ……いいよ。でも、俺が嫌な思いをするのはわかってたんだろ?だから黙ってたんだよな?」
「そ!そうよ!ママが……ママを気に入っちゃって……話をするとストレス解消になるもん。優のボトルも残ってたし……」
「……ふぅん。まぁそれはいいよ。でもゆかりさんの家にまで行って、その子供と仲良くなってたよな。」
「ゆかりさん、仕事中に子供が調子が悪くなって困っていて……一人親だし、夜だし……」
はぁ、と溜め息をついた優。
「俺、透子のそんな優しいところ好きだよ。
俺の元カノの為に奔走するなんてなかなか出来ることじゃない。
だけど…………ゆかりさんは自分で選択した道なんだぞ。」
「そ、そんな、冷たいよ!困ってたから助けてあげたかったの!誠ちゃんも可愛い子だし……
それに、優だって助けてあげたいでしょ?だって昔は好きだった人なんだよ?」
「別にゆかりさんにはもう何の感情もないし。」
その冷たい言葉に愕然とした。
今カノの私としては喜ぶべきなんだろうけど、今の私には喜べない。だって、私自身元カノになりつつあるのに、『何の感情も無い』なんて……
私もそんな風に優の人生から切り取られてしまうのだろうか。