浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
今、私とここで別れないと、万里子さんはどうなる!
まさか……まだ二股かけるつもりなんだろうか……
強い力で抱き締められ腕の中から出られないが、せめて優の思い通りにはさせまいと必死でもがいた。
「なんだろうなぁ……この可愛い生き物。」
「はっ、離してよ!」
「離せないなぁ……」
もはや優は私の頭に自身の頬を擦り寄せていた。
「私は愛玩動物じゃないわよ!」
思いっきり優の胸に手をついて、彼の束縛から逃れる。
優の顔は今日初めて見る、蕩けた笑顔だった。
「な、なんで別れようとしてるのに、そんなに嬉しそうなの?」
わざと眉間にシワを寄せてみる。
「?別れる?誰が別れるって?これは可愛い女の子のヤキモチでしょ?」
「違うっつーの!」
この勘違い君は、脳内お花畑のようだ。
「だから、万里子さんは妊娠してるんじゃん!」
「それを聞いたの?」
「そうよ!『ちゃんとする』って優が返事してたじゃない!」
「そうだよなぁ。俺がしないとなぁ。」
「ほらっ!」
優の罪を、彼自身に思い出させるように大きく頷いた。
もう。これだったら誠ちゃんの方が賢いよ!
「俺の子じゃないし」
………………
「俺の子だと思った?」
「……違うんですか?」
「俺の子だと思って、身を引こうとしたの?」
「…………」
「泣きながらUターンしてきたの?」
「…………」
「家で悲しくて泣いたの?」
嬉しそうに問い掛ける優に「木島さんの胸で泣いた」と言ってやりたかった。
だけど、関係ない人を巻き込むわけにはいかない。
優のことだからきっと家を突き止めて、けじめをつけそうだ。