浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
手詰まりの関係
優の独り言のような愚痴に耳を傾けていた。
「本当に仕事はいいんだ。だけど、万里子さんが仕事に私情を持ち込むんだ。まぁ……ある程度仕方がないんだけどさ……職場恋愛だから。」
「……職場、恋愛……」
「だけど、なんかケンカをおっ始めて、子供を産むだの堕ろすだのって。なんでも彼氏が浮気してたみたいで。」
「……そうなの…?それは……」
気の毒だ。かなり。
自分は妊娠してるのに、彼氏は浮気。
妊娠してることすら告げられない状態だろう。
「そんなこと、するかなぁ。あの人、完全なオタクなんだけど。」
「……へぇ」
「ものすごいプログラム組む人でさ。あの人あっての会社経営なんだよね。社長の万里子さんと別れたら、辞めちゃうのかな。あの会社、成り立たないだろうなぁ。」
「そ、そんなすごい人なの?」
「うん。そもそも、その人のために万里子さんが立ち上げた会社なんだ。」
「す、すごいね!」
「だろ~情熱家だよね、万里子さん。俺の情熱には負けるけど。」
「……そんなスゴい人が辞めたらどうなるの?」
「うーん……潰れる?取り合えず、こっちへの移転は無くなるかも……」
「そ、そんなぁ……」
万里子さんのお腹の子の父親が優ではないとわかったものの、結局この遠距離のジレンマは続きそうだ。
「だから!早く仙台に来てほしい。俺、透子と居れるならどこでもいいから。」
「そうは言われても……あ、取り合えず万里子さんと彼氏さんの仲を取り持たなきゃ。妊娠してること、その人に言ったの?」
「え……?そこは他人の俺からは言えないだろ?大事な事だし……キジマさんも頑固なとこあるから、それを俺から言われたら立つ瀬ないだろうし、余計にこじれそう。」
「…………え?」
「ただでさえも、俺の存在疎ましがられてる気がするし。」
先程のは幻聴?
名前が聞き覚えあるんですけど。
「『キジマ』さんって言うの?その人……」
「え?うん。『キジマ コウタロウ』。知ってる?業界では結構有名なんだよ。」
目の前が真っ暗になった。