浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
「やっぱり、出掛けてるかな?」
再度ベルを鳴らしても開かないドアの前で、優はそう言う。
「う~ん……木嶋さんと会ってるのかな?あ、家で待ってよっか?」
「あんまり時間無いんだけどなぁ……」
「透子、明日仕事?」
「さすがにそんなに再々休めないしね……」
「いーじゃん。一日ぐらい。もう辞めるんだし。」
「よくないでしょ!もうちょっとなんだから余計に!」
ガンッッ!
何かがドアにぶつかって、私達は黙りこむ。
「うっっっっるさいっ!」
その怒鳴り声は万里子さんの部屋の中からだった。
「ま、万里子さん?」
「…………」
ドアの向こうにいるだろう人に向かって優しく話しかけた。だけどそれ以降また音も声も聞こえない。
優は腰を下ろし、ドアポケットを軽く開けて部屋の中に向かって声をかけた。
「あの……吉岡ですけど……」
「知ってるわよ!うるさいっつってんの!」
私は呆然。
だって、あのスレンダーな大人女子が何かをドアに向かって投げつけ、怒鳴っている。
あの女の人、そんなことするか?
想像がつかない。
「いやいや、ちょっと話があるんで開けてもらえません?」
そんな私の困惑を他所に、優は平然とドアポケットに向かって話し掛けている。
「うるさいっつーの!吉岡!ワタシに楯突くの!?」
えー……ほんとにあの社長さん?
「そういう訳じゃないんですけど。木嶋さんのことでちょっと……」
ガン!ガガンっ!
また何かをドアに投げたようで、私は当たりもしないのに思わず仰け反った。