浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)

優のいない夜は暇をもて余し、平日の中日だと言うのに時ここへ来てしまう。

優の入れてあったボトルをチビチビ飲むもんだから、売り上げにはなってないのに熱烈歓迎してくれるから来てしまうんだ。

そう、ゆかりさんの働くスナック。

ゆかりさんのやった事は理解不能だし、今でも許せない気持ちはあるんだけれど、それを除けばそんな嫌な人ではない。

罪を憎んで人を憎まず

なるほど。上手いことをいう人が居たもんだ。

だけどそのゆかりさんは、私を嫌悪するわけでもなく歓迎するでもなく、通常運転だ。
元より淡泊な人らしい。

「で、すぐるは元気?」

それでも優の話がこの人から出るとなんか嫌だ。
だから、
「誠ちゃんは?」ゆかりさんの息子の話を聞き返してやるんだ。
すると、「うーん……最近生意気になってきた。好きな子がいるらしくて、その子の話ばっかり。あ~やだやだ。」

息子の誠ちゃんは年長さん。
今は一人で留守番してるらしい。
ゆかりさんはシングルマザーだから。

「ふぅん。ませてるね。でもいいじゃん。保育園楽しいだろうなぁ。」
「…………まぁ、楽しんで行ってくれてる分にはいいんだけどね。夜はやっぱり寂しいだろうし、やいのやいの言えないよね。」

「……今日は?」
「家にいる。」
「…………一人?」
「そ。一人。しっかりしてるよ。」

私は心の中で唸った。
保育園児が一人で寂しくないわけがない。
今、どうしているんだろう。

それでハタと思い付いた。私、平日は暇だったんじゃない?

「毎日は無理だけど……たまに預かろうか?」
「え?」
「私、残業ない時は結構暇だし。」
生意気な、でもかわいい誠ちゃんがママを思って寂しがってる図を思い浮かべて、思わずそう言った。
「…………や、いいよ。子供の世話って大変だし。」
「でも、誠ちゃんは自分の事は、自分でできるでしょ?」
「そりゃ、まぁ……」
「だったら。私は誠ちゃんと会いたいなぁ。一回あっただけだけど、人見知りも無さそうだし賢そうだし。一緒に晩御飯食べてテレビ見てお風呂入って話してたらゆかりさん迎えに来てくれるでしょ?嫌じゃなかったらそっちの家に行って寝かせといてもいいし。」

ゆかりさんはしばらく考えていた。
「やっぱり、でも……」
私に預けるのは悪いと思ってるのか、それとも不安だと思ってるのか。戸惑っている。

「じゃあ、困ったら連絡して。」
と、ゆかりさんに連絡先を書いて渡した。

ただ、単なる暇人によるお節介のつもり。
優を苛めた元カノのゆかりさんに、寛大な心を見せつけるぐらいの気持ちだった。

まさかこれが波乱の幕開けになるとは思わなかったんだ。



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