浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
優はドアポケットから手を離し、ゆっくり立ち上がった。
そしてこちらに向き直り、
「ごめん。ビックリしただろ?あんなんなんだよ、いつも。」
へ?いつも?
私の目が丸くなってることに気付き、フッと笑って私の頬を撫でた。
その時勢いよくドアが開かれ、私達を一瞥した部屋着姿の万里子さんは
「人の家の前でイチャつくやつはクビ」
と、ドアを閉めようとした。
「おっ……と!」
間一髪で左足の先をドアに挟ませた優。
そのまま、中に体を押し込んで、私を手招きした。
「何すんの!吉岡!不法侵入で訴えるぞ!」
「はいはい」
「勝手に入るな!」
「いいからいいから」
まるで子供とそれを宥める大人。
私はその後ろからそっと部屋に入り、鍵をかけた。
「お邪魔します……」
「ジャマだから帰れ!」
うぉっ。こんな言葉を浴びせられたのはいつぶりだろう……
以前の万里子さんのイメージと真逆の、乱暴な態度と言葉に驚きながら彼女の向こう側をチラと見ると
なんと……酒の缶がいくつか転がっていた。
お酒……?
私が言葉を発するより早く、優はドカドカと入り込み、冷蔵庫の中からミネラルウォーターを出して万里子さんに突き付けた。
「早く飲んで!」
見ると優は怒っていた。かなり。
「…………嫌よ!アルコール入ってないじゃない!」
そういう万里子さんは足元が少しふらついている。
「何考えてんだ!こんな時期にアルコールなんて!」
「う、うるさい!放っといてよ!関係ないでしょ!どうでもいいわよ、もう!」
「いいから早く飲んで!」
「嫌よ!」
物凄いヒートアップ。
ただ二人のやり取りを見ていたが、
このままでは燃え尽きてしまう。