浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
「ストップ‼やめてください!」
万里子さんは私に向かっても噛みついてきた。
「何よ!吉岡の女がなんの用よ!」
吉岡の女(おんな)って……
美人の怒り顔は迫力がある。
かなり出来上がってるなぁ……
「あの、私は木嶋さんの事をお話ししに来たんです、けど……」
「……木嶋なんか関係ない……う……」
優が飲まそうとしたミネラルウォーターを受け取らず、突然苦しそうな顔をしてリビングに入っていった。
そして、座り込みその場で蹲った。
「まっ、万里子さんっ?」
焦った私達は追いかけて顔を覗き込んだ。
万里子さんは優の肩に手をかけた。
「き、気持ち悪い……」
そのまま優のズボンの上に嘔吐した。
「え、えぇ~!」
そしてそのまま床に転がってコテンと寝てしまった。
「…………!優!服……持ってくるから鍵!」
「いや、自分で行くわ……はぁ。だけど万里子さんをこのままにはしとけないな……」
「あ!木嶋さんに電話!」
「あ、スマホ……」
優の言葉を聞く前に自分のスマホを取り出した私は木嶋さんを呼び出した。
なかなか鳴り止まない呼び出し音に苛ついた。
ようやく「はい」という無機質な声が聞こえた。
「あ!私、先日お世話になった藤原透子です!おうちにお邪魔した、新幹線の……えっと……わかります……?」
「……あぁ!俺を蹴っ飛ばした?」
そこかよ……
「…………えぇ、まぁ……」
「今日はどうしたの?」
「えーっと、あ!私、今万里子さんの家にいて!早く来てください!」
「は?……万里子?」
「そうです!恋人の万里子さんですよ!出来るだけ早く来てくださいね!」
「な?何?どういうこと?」
「いーから!万里子さん、倒れてるんです!」
そこまで言ってから、通話終了してやった。
一仕事を終えた感で満足気に優を見やると、優はジトーっとこちらを見ていた。
「…………何で木嶋さんの連絡先を知ってる?」
うわぁ!しまったぁ!地雷踏んじゃったよ!