浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)

木嶋さんはピタッと動きを止め、ゆっくり優に顔だけを向けた。

「俺の気持ち……?」

なぜか急に張り詰めたような空気になる。
しばらく二人は互いを睨み続けた。

「万里子さんとやってく気持ちがあるのかどうかですよ。今までのように、『なんとなく』じゃなくて。」
「……誰が『なんとなく』だ。」
「だってそうでしょ?万里子さんの変化にも気付かず、人の彼女をマンションに引っ張り込んでるんですから。どう言い訳するつもりです?」
「あれは、お前の彼女が酷い顔してたから、外では不味いと思って連れてっただけだ。そんな顔させたのはお前だろう。お前にそんなことを言われる筋合いはない!」
「元はと言えば、万里子さんが俺に頼ってきたからだ。あんたが不甲斐ないから!」
「……なにぃ?」

「ちょっ!ちょっと待ってくださいっっ!」

「透子は黙ってろ!」
「俺だって我慢ならない!」

まさに一発触発の二人。
万里子さんが倒れてる前で、大の大人の男が何やってんだろう。
どっちもどっちの言い分に腹が立ってきて、私は誰よりも大きな声で怒鳴った。

「うるさい!喧嘩するならあっちの部屋に行けっての!私は万里子さんを病院に連れていく!」

そこで木嶋さんは目を剥いて私と万里子さんを交互に見た。
「……病院?酔っぱらっただけだろ?」
「えぇ。酔っぱらっただけ。…………妊婦さんがね」

「…………え?……あ?………………ニンプ?」
「あ~……透子…………言っちゃった」
「だって仕方ないでしょう!緊急事態なんだから!」


すると、木嶋さんは万里子さんを抱き起こし、
「万里子!どれだけ飲んだんだ?……万里子!」

万里子さんはゆっくり片目を開けて「ふにゃ、眠い……」と木嶋さんの首に両手を絡ませた。

返事があり、ほっと息をついた木嶋さんは「水、飲もうな」そう言いながら抱き上げた万里子さんを奥の寝室へ運んだ。
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