浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
同じだ。木嶋さんと私は同じなんだ……。
焦りと不安が変に威力を持って、違う方向へ自分を押しやってしまう。
そして、それは空回りして、事態をややこしくするんだ。
伝えられればいいけど、それは自分ではわかりにくくて、しかも見栄なんかが邪魔をして、結局言葉で伝えるのは難しい。
全然関係のない人には言えちゃうのに。
「吉岡にはわからないだろうな……」
フッと笑う木嶋さんは、会った頃のおちゃらけ具合は一ミリも無い。
身に付けた鎧をすべて取っ払ったらこんな頼りなげになるんだ。
だけど、そんな木嶋さんはとても愛おしく感じられるのに。
「俺がこの会社に来たのは、間違いなく木嶋幸太郎のせいですよ。」
「……?」
「あなたが、万里子さんの会社のクリエイターだったから。そしてこの会社は木嶋さんを抱えるにはまだ未熟な会社(ハコ)だと思ったから、仙台まで来ました。」
ようやく顔を上げて、優の言わんとすることを理解しようと見つめ返す木嶋さん。
「俺がどんなに優秀な営業だって、自分が売る商品に自信が無かったら無理でしょ。
木嶋さんが万里子さんと別れて別会社に行くなら、俺は辞めますよ。」
「……な、…ちょっと」
「木嶋さんについては行きたいと思ってたんですけど、ちょっと男としてはどうかと思うんで、透子の近くで他探しますけどね。」
「すぐる……」
なんでいい話の後に、落とすようなこと言うんだろう。
また喧嘩になっちゃうよ。
だけど私の心配を他所に、木嶋さんは黙って聞いていた。
「まぁ……万里子さんは木嶋さんが出ていったら、会社閉めるでしょうね。
……って!万里子さんが東京に移転するって言うから、婚約者にも会わずに慌てて進めてたのに、急に『やっぱりやめる』とか、ほんと迷惑。理由聞いたら『妊娠したからこっちで産みたい』なんて。で、彼氏と別れたら会社閉めるだろうとか?」
はぁ~と大袈裟にため息をついた。
「社長でしょ?恋愛も仕事も出産も。三足の草鞋履いてよって感じなんだけど。その為に社員もいるんだし。俺は何のために来たの?って、思うよ……」