浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
優ってこんな考え方する人だったっけ?
フェミニストなのに、妊婦の万里子さんに容赦ない。
「優……万里子さんも不安で……女の人だし、妊娠してるんだから……」
「俺は万里子さんを女として見たことないよ。社長だよ。上司だよ。
職務を全うしないで、自分の都合であっちこっちに社員を振り回すなんて、失格だよ。
それに!木嶋さんもいい大人なんですから。彼女の気を引こうとして、自分のペース乱しすぎ。そんなんでクリエイターなんてやっててもこの先たかが知れてますよ。」
優の怒りはわかるけど、あまりにも酷い言い様に困惑を覚えた。
だって、みんな傷ついてるのに……
優秀な営業の優は、もっと言い方を知ってるはずなのに。
「そうだな」
そこで拍子抜けするぐらいあっさりと頷いた木嶋さんにちょっと文句を言いたくなった。
だけど、木嶋さんが笑ったから。
「俺、余裕無さすぎだな。」
「……ですよ。」
「最近、知名度が上がってきて、焦ったのかも。俺って元々ただのオタクなのに、ちやほやされて『クリエイター』なんて言われて自分を見失ってたか……」
はぁ~っと天井に向かって息を大きく吐いた。
「俺、あいつといるとダメになるんだろうか……」
寂しそうに呟く木嶋さん。
そして、頭を抱えた優。
「あ~ぁ……これだからネクラは嫌だよ……。なんでそうなる!?万里子さんはオタクのあんたの一番の理解者じゃないか!あんたが居なかったら万里子さんは会社起こしてないってのに!」
そうだったんだ……。
木嶋さんは万里子さんのために。
万里子さんは木嶋さんのために。
こんなに思いやって支えあっているのに、すれ違ってしまっているの?
木嶋さんは片膝を抱えて考え込んでいる。
そこに上から目線で冷たく言い放つ、優。
「しっかりしてよ、木嶋さん。俺、こんなんじゃやってけないよ。
…………万里子さんいなくなってもいいの?」