空から雨が降る日。【完】
「え…、吾彦、さん…?」
びっくりしたせいか、泣いた後のせいか、声が震える。
名前を呼んでも返事がない。
だけどぎゅっと強く、腕を締めてくる。
「…あのー…」
どうかしたのだろうか。そう思うにも返事をしてくれないから聞けなくて。
私はただ、固まるしかできなかった。
そしてやっと体が離れた時、吾彦さんは笑顔で
「なんかあったらいつでも言え。泣きたい時は俺を呼べ。なんでも聞いてやる」
そう言った吾彦さんの笑顔は、どこかで見たような、笑顔で。
私は小さな声でありがとうございますと呟いた。
そしてその後は、お互い家に帰って行った。