空から雨が降る日。【完】
Side 晴太


『星埜雫です』
名前を聞いた瞬間、一瞬疑った。

目の前でそう言って挨拶をするそいつは、あの頃とは全くの別人で。

女は変わる。
そういえば昔、誰かが言ったその言葉を今、本気で信じた。

女子と男子が集まって、話をする。あわよくばそのままお持ち帰り。俺が知っている合コンなんてそんなもので。

『ねぇ~吾彦さんてどんな人がタイプぅ?』
甘ったるい声。甘ったるい香水。潤んだ目で上目遣い。
俺に集まってくる女なんて、そんなもんで。

『みんな好きかな』
そう返すと大抵の女子は喜ぶ。

だからその日もそうやって過ごしていた。
…なのに、目の前のそいつは一人メニューを見てニヤニヤして。おいしそうだなぁと呟く。

周りに、俺に興味なんてわかずにただまっすぐメニューだけを見る。


それが気に食わなくて、イライラして。言葉をぶつけた。
絶対に、反応するその言葉を。


『…お前、空雨の』


言葉を放った瞬間、そいつの目が、顔が変わった。

あぁやっぱりそうなんだ。こいつはあの時の。


俺はトイレに行ったそいつの背中を見ながら

『やっと見つけた』
そう呟いた。

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