空から雨が降る日。【完】
トイレに戻ってきてからも、周りには興味なさげなそいつ。
俺はそいつに嫌な言葉をぶつける。
そしてやっと俺の方を見て、怒り始めたそいつは俺に水をぶっかけてきやがった。
『…ぷっなんだ、あれ』
俺に水をぶっかける女なんて初めてだ。
おもしれえ。
『吾彦さん、…大丈夫?』
周りの女子が気にしてくれながらも俺はそいつのことを思い出して笑う。
そして軽くタオルで身体を拭くと、すぐに立ってそいつを追いかけた。
だけどすぐに後悔した。
だってそいつは泣いていたから。
雨の中、ある男のことを思い出して苦しそうに泣いていたから。
だから決めたんだ。
泣かせたくない。泣かせねえって。
だけど―…
『空雨』
その名前を出した時、…後悔した。
あいつはまだ、雫の傍にいる。
まだ、雫を、こいつを苦しめている。
『…ごめん』
雫が出ていったあと、ボソッと呟く。
きっと雫を苦しめているのは空雨…いや、俺なんだ。きっと俺が―…