空から雨が降る日。【完】
「こんなこと、言っていいのかわかんなかったから黙ってたんだけど。…私、雫は吾彦さんのことが好きなんだと思ってた」
「え…?」
優子から出た言葉に衝撃を隠せない私は、持っていたコップが小刻みに震える。
落ち着け、落ち着けと心で念じながらもう一つの方の手を添えて震えを隠すように包み込む。
「雫ってさ、男の人に本当興味ないじゃん…?」
「…うん、そうだね」
「だけど吾彦さんは違った」
「違う?」
「あんたが吾彦さんと出会ってほとんど毎日のようにご飯食べに行ったりしてて私、雫は変われたんだってそう思ってた」
「…っ」
「私は雫の過去を知らない。…だから、なんで恋をしたくないのか、なにがあったのか、わかんないよ。だけど」
「一人で、抱え込まないでよ…っ」
そう言った優子は声も、手も、全てが震えていて。
「優子…、」
私はただ彼女を見つめて、名前を呼ぶことしか、できなかった。