空から雨が降る日。【完】



『あめ~っ』

びしょ濡れの格好のまま病室に入る。空雨の名前を呼ぶが、空雨はなんも反応がない。
あれ?と首を傾げじっと空雨の方を見る。
すると目がばちっと合い、私を見て『は!?』と声をあげた。

『え…ぇ!?』
その声にビクッとし、跳ねる身体。私は驚いて身体が動かなかった。

『ほら』
だけど空雨はそんな私をよそに、すぐに冷静さを取り戻しクローゼットからタオルを取り出しぽいっと私の頭に投げてくる。

『ありがと…』
空雨の匂いと病院の匂いが混ざったタオル。
私はそのタオルで濡れていた髪や服を拭く。

そしていつものように空雨の近くにある椅子に座った。

『でさ―急に雨が降ってきてさ』

『だからおばさんの言うこと聞けって』

『だよね~お母さんが知ったら怒りそう』

『ははっ多分ぜってえ激怒だな』

いつものような会話。いつものように笑う声。変わらない。なにも。

『空雨くんー点滴はじめるねー』

私が来て一時間が経った頃、看護士さんがガラガラを引いて空雨の病室に入ってくる。
いつもこのくらいに空雨は点滴がはじまる。
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