空から雨が降る日。【完】
『よろしくお願いしまーす』
軽い挨拶をして、はじまる点滴。
それを見る度に、あぁ…まだなんだと実感する。
一向に決まらない、空雨の退院。
いつなのか、いつなのかとみんなが思っていた。
最初の頃は『早く退院できるといいね』と話してみんなも、こんなに長くなってきた頃、誰も何も言えなくなっていた。
“退院”
その言葉すら、出すことができなくなっていた。
『そういえばクラスの男の子がね、今日告白してたよ』
『え、誰?』
『んー…一番前の子』
『知らねえし』
三年になってから、一度や二度しか来たことのない学校。
クラスは先生たちがしくんで…いや、考えてくれたのか三年間私と空雨は同じクラスだった。
まあ、空雨の事情を知っているのは私の他にはほとんどいないからそれが正しい選択だったのだけれども。
話をしながら、拭き終わったタオルを鞄につめ『明日洗って持ってくるね』と伝える。