空から雨が降る日。【完】
『なに、それ…っ』
お手洗い場に着いた途端、涙が、溢れた。
いっそのこと雨に濡れている時に流れてくれればよかったのに。こんな。こんな。
戻ったら、ばれてしまうような時に。
あぁ早く戻らないと空雨が心配しちゃう。早く、止まれ、止まれ。
ゴシ、ゴシと腕で涙を拭いて花瓶の中の水を取り替え、すぐに病室に戻った。
ガラと音を立て病室のドアをあけると、そこには点滴をされ窓の外を見る空雨の姿。
『…空雨?』
『久々に、外見た』
『あ…』
そう言えば、入院してからというもの、カーテンをあけることなんて…なかった。
看護士さんに開ける?と聞かれても、開けないでくださいと言うのがもう空雨の口癖みたいなもので。
それから誰も聞かなくなっていた。
なのに、
『どう、したの?』
空雨が自ら、カーテンを開けた。
それは何を示していたのか。
私にはわからなくて。