空から雨が降る日。【完】



『なに、それ…っ』

お手洗い場に着いた途端、涙が、溢れた。

いっそのこと雨に濡れている時に流れてくれればよかったのに。こんな。こんな。
戻ったら、ばれてしまうような時に。

あぁ早く戻らないと空雨が心配しちゃう。早く、止まれ、止まれ。

ゴシ、ゴシと腕で涙を拭いて花瓶の中の水を取り替え、すぐに病室に戻った。

ガラと音を立て病室のドアをあけると、そこには点滴をされ窓の外を見る空雨の姿。


『…空雨?』

『久々に、外見た』

『あ…』

そう言えば、入院してからというもの、カーテンをあけることなんて…なかった。

看護士さんに開ける?と聞かれても、開けないでくださいと言うのがもう空雨の口癖みたいなもので。

それから誰も聞かなくなっていた。

なのに、

『どう、したの?』

空雨が自ら、カーテンを開けた。
それは何を示していたのか。

私にはわからなくて。


< 158 / 311 >

この作品をシェア

pagetop