空から雨が降る日。【完】



「それから、雨が嫌いになったんだ」


昔は…空雨がいた頃はあんなに好きだった“雨”が、今じゃ私自身を苦しめるものでしかない。

雨が降り出すと空雨を思い出してしまう。


―『傍にいるみたいだから』―


昔、空雨にそう言った。
だから本当に、その通りな気がして。


だから昨日、晴太に迫られた時も、外で降る雨の音を聞いて空雨が見ているような気がして怖かったんだ。

「吾彦さんのこと嫌いではないの?」

「嫌いじゃ、ないよ…」

言われてみれば確かに最初の頃は嫌だったし苦手だった。というよりも怖かったけど、今はそんなことない。

晴太のいいところもちゃんと知ってる。

だから、今は嫌いじゃない。
会って昨日のこと謝らなきゃいけないって頭ではわかっているのに。

「だけど謝ったところでどうすればいいの―…」

恋愛になんて発展できるわけがない。
謝ったところで、私の中も、それ以外も何かが変わるというわけじゃない。

それならいっそこのまま離れた方がいいんじゃないか。
お互い、傷付かずに済むんじゃないの?

そう、考えるようになってしまっていた。

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