空から雨が降る日。【完】
「ねぇ雫。その彼とはさ、どんなところに行ったの?」
「どんな、ところ?」
「そう。だって小さい頃からずっと一緒だったんでしょ?もう運命だよねロマンチック!羨ましいよ~」
漫画とかでよくあるシチュエーションとか、ロマンチックな話が好きな優子は私と空雨のことをどんどんと聞いてくる。
だけど、今はなぜか苦しくはなくて。
「話したらさ、少しでも良い方向になると思うんだ。自分の胸の中に閉じ込めてあるより」
優子は、私を考えて聞いてくれたんだ。
そう思うと、涙が目に浮かぶ。
「…うん。…空雨とは色んな所にいったよ」
パンケーキを焼く音が、キッチンの方でジュージューと鳴いている。
私はお水が入っているグラスを水へ運び、一口ゴクンと音を鳴らして飲んだ。
小さい頃から、家族で出かけるのも、どこに行くのも、なにをするのもいつも一緒だったから。
アルバムを開けば、私一人の写真というよりも二人の写真が多かった。
空雨が亡くなった時、ふと部屋にあったアルバムを見た。
そこにあったのはいつも私の隣で笑っている空雨の姿で。
『…懐かしいな、これ』
私が手にしたそれは家族で温泉旅行に行った時の写真だった。