空から雨が降る日。【完】
私と空雨がまだ幼稚園のころ。
ちょっと豪華な温泉があるところへ家族で旅行に行ったんだ。
確か時期的には…冬だった。ちょうど雪が降ってた。
『ゆき、とけちゃうねえ…』
温泉に浸かっていた私は周りに積もっていた雪を手に取って温泉に入れる。
お母さんには『そんなことしちゃだめ!』と怒られていたけれど、この年頃はいたずらが大好きで、ダメと言われたらやりたくなる時期だった。
だからダメだよと言われたものにはいつも手を出していた。
その後に起きた事件も、その好奇心が原因だった。
「事件?」
「そう。ほんと、バカだったからさ。私たち。」
でも、それが楽しかった。
「どんな事件だったの?」
「うん、それはねー……」
あれからお母さんに怒られつつも、お風呂から上がった私たち。
部屋に戻ろうと、廊下を歩いていると聞こえた声にビビビと私の悪センサーが働いた。
『そういえばね、夜中にこの温泉に入ると小さな子が泣いている音が聞こえるんだって』
『やだぁ…なにそれ、怖いわぁ…』
それはおばさんたちが口に手を抑えながら話していた会話で。
『夜中は入らないようにしようね』
お母さんもその話を聞いていたのか、私にそう言いつける。