空から雨が降る日。【完】
私は空の缶コーヒーを捨てる上司の背中に向かって深くお辞儀をする。
そして、小さい、上司にしか届かないかのような声で、
「ありがとう…ございます」
そう呟いた。
上司、なのに上司っぽくなくて。
こんなことを本人に言ったら失礼なんだけど…ね。
でもそれくらい、テレビや漫画で見るような上司とは全然違くて。
なんていうんだろう。本当に、よく面倒を見てくれる近所のお兄さん…てきな。
そんな上司にいつも、いつも助けて貰っていて。
上司だけじゃない、優子も…そして晴太も。
空雨のことで一人逃げて悩んで苦しんで。
バカだな、もっと、もっと早く甘えればよかった。
私は一人じゃない、そう言ってくれる人はこんなにもたくさんいるのに―…
私と上司は事務所に戻って各自の仕事をはじめた。
―――――…
――…
「はい。では来週の水曜日に…はい、はい。失礼します」
新しい取引先との電話が終わり、受話器を置く。
全員が見るカレンダーにも“企画”と書きペンを置く。