空から雨が降る日。【完】
「…じゃあ、行ってくるね」
終わりのチャイムが鳴りみんなが「お疲れ様です」とお辞儀をして事務所から出ていく。
私はみんなが帰った後くらいに仕事が終わり、鞄を持って立ち上がる。
「うん、頑張っておいでね!…私は残業だけど…」
目の前で笑顔で手を振っていた優子の表情が一気に絶望の顔へと変わる。
「ご、ごめんね…手伝えなくて…」
優子を前にあたふたとする私。
手伝ってあげたいのは山々…なんだけど多分もうお店に晴太は来てる。
遅れると連絡をいれようか。そう思っていた時ポンっと私の肩を叩く手に振り向く。
そこにいたのは、凄くさわやかに笑っている…上司で。
「じょ、上司…!」
「いいよ。僕が一緒にやろう」
「え…いや…いいですよっだ、大丈夫です…!」
まさかこんなことになるなんて思ってもなかった優子も今までにないくらい焦っている。
そんな優子を見てくすっと笑みが零れた。
「星埜さんは、もうあがって大丈夫だよ」
何も、言っていないのにわかったような口調で優しく言ってくれるから。
「ありがとうございます。…優子を頼みますね」
「任せて。一時間で終わらせようね」
「えっあっ…はい!」
お礼をして改めて鞄を持ち直し事務所を出た。