空から雨が降る日。【完】
「あ、そ、そうそう。来週の水曜日にね企画はじめるんだ。…これ資料」
違う。違う。違う。
私が差し出す資料を見てあぁと呟く彼。
「よく取れたなーここ大手だぞ」
パラパラと資料を捲ってすげえすげえと言う。
大事なこと、これも大事だから…仕事として。
だけど違う違うよ、雫。
あんたが言わなきゃいけないのはこれだけじゃないでしょ。
わかっているのに頭では、ちゃんとわかっているのに言葉が出てこなくて。
もがいている私に晴太は優しく言葉をかけてくれた。
「ごめんな、この前」
「え…」
「いきなり、ごめん」
「や…っちが、別に…」
別にあの行為のことが、嫌だったんじゃない。
確かに私たちは付き合ってないし、その行為をするにはおかしい関係だけど。あの時はお互いにお酒が入っていた。
だからあれは、仕方のなかったことであって。
「私の方こそ、…ごめん」
勇気を振り絞って出た言葉。
伏せていた顔をあげると、そこにはニッと歯を見せて笑っている晴太が、いた。