空から雨が降る日。【完】



―『晴太くんよ!覚えていない?』―

笠原さんに、言われたこと。


なんとなく。そう…なんとなーくだけど、想像はしてた。

出会った時、晴太から『空雨』の名前を聞いた瞬間から。
この人は空雨と知り合いだったんだって。

だけどどこで知り合ったのか、私は思い出せなくて。

怖い、嫌だ、苦手だ。
ただ直感でそう思ってしまった。

晴太は私にはあれ以来、空雨のことは聞いてこなくて。
ついには離れて行った。
だから安心していた。

なのに―…


「はあ…?どういうことよ、友達って」

「…今日ね病院で、笠原さんっていう看護士さんに会ったの。空雨の担当だった人でね」

ずっと空雨を観て来てくれた人。

「その時に、ふって笠原さんが言ったの。晴太を覚えているかって」

カフェオレを飲みながら、私に尋ねてきたその言葉。

だけどなにも返す言葉が見当たらなくて。
ただ黙っていることしか、出来なくて。

「空雨とよく病院で遊んでいた子。
あの頃空雨の中で一番仲の良かったお友達。それが、晴太だって―…」

そう、笠原さんは口にしたんだ。
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