空から雨が降る日。【完】



“優子”

それは、この前漸く、言って貰えた名前で―…

「あ、あの…」

「ん?」

手を進めている上司に言葉をかける。

今まで、こんなに緊張した恋ってあったっけ。
名前を呼ばれて嬉しいと思った恋はあったっけ。
もっと話したいな、って感じた恋はあったっけ。


『優子、がんばれっ』

雫ももう、前に進んだ。


次は―私の番だ。

「お、お名前…っ呼んでもいいですか!?」

「え?僕の?」

「は、はい…っなんか上司って呼ぶのかたい、かな…とか…そんな感じ、が…」

なに言ってるんだ。自分。
上司なんだから上司って呼ぶのに固いもなにもあるか。ばか。


あー終わった。

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