月が綺麗ですね。
「正真正銘ラブレターですけど」
「いや、ラブレターで『大嫌い』って、矛盾しまくりだろ」
怪訝な椎名くんの目から逃れるように、目を逸らす。
「裏見てみなさいよ、裏」
カサカサという、紙の微かな音が聞こえた。
「なんだこれ…」
裏には、それはそれは小さい字で『大好き』と書いてある。
「………」
その目は何かしら?
心底おかしな物を見るような目だけど?
「おもしろいっていうか、変って感じじゃねぇか?これ」
そこは覚えてたんだ?
「……だって」
「だって?」
「だって椎名くん、普通の告白なら腐るほどされてると思ったから。『おもしろい』の定義なんて分からなかったし、とにかく新鮮さを狙って、みま、した……」
最後の方は、自信が底を尽きた。
俯いた顔が上げられない。
一回フラれたんだから、二回目だって大丈夫。
そう思っていた。
でも今は、その言葉が何故か怖い。
「………却下」
「そう、だよね…」
「出直せ」
「………え?」
それって……
ばっと顔を上げた。
「また挑戦してこいよ」
憎たらしい勝ち誇った笑み。
そんな顔でも絵になるんだから、本当に憎たらしい。
でも……それが、椎名くんなんだよね。
私の好きな人。
「っ……絶対に落とす!!」
「まぁ、しばらくの暇つぶしにはなるかなぁ…」
「楽しみにしててよね!退屈させないから!」
いつか絶対に好きって言わせてみせるから、待っててね。
私の、初恋の人。