月が綺麗ですね。
4.出会い頭に告白。
移動教室の途中に遭遇。
『あ、椎名くん、好きです』
『あ、ってなんだよ』
却下。
新鮮さを狙ってる結果がこれだから、もう笑うしかない。
―――――「今日学校で会ったら開口一番そう言おうと思ってたんです~~」
「こんにちは、のノリで告白してくるんじゃねぇよ」
「じゃあ一体何だったら付き合ってくれるの」
今にも舌打ちしそうな私。
「そんなイラつきながら『付き合え』って言われたの初めてだな」
私もこんなイライラしながら告白したの初めてです!!
「平常心保てるほど大人じゃありませんもの私~~~」
「今日は海苔弁あんのか?」
「は…?」
告白の話終わり?
メインなはずだけど?
海苔弁?
「文字要らねぇから、明日から普通の海苔弁持って来い。お前んちの海苔美味いな」
「文字要らないって、一番大切な部分なんだけど……?」
「知るか」
「もう海苔とでも付き合ったらぁ!?」
「あぁ~……そうするか」
ものすごく、ものすごく憎たらしい笑顔で微笑む……けど、悲しいかな、そんな顔もイケメン。
神様はなんて奴に、なんて顔を授けてくだすったのだろう。
こんな時まで、ときめいてる私って、病気?
キーコーンカーンコーーン………
「そろそろ戻らないと……次こそ覚えてなさいよ」
「はいはい、早く戻れ」
「言われなくても戻りますぅ!!」
足早に自分の教室に戻りながら、今更、その何気ない約束に気づいた。
約束が、二つになった。
嬉しい。
自然と顔が綻んでしまう。
どうしようもなく憎たらしい彼だけど。
私のこと、嫌ってはないみたい。
それにしても、どちらかと言うとチャラい雰囲気の椎名くんが海苔好きとは…意外だなぁ。
人は見かけによらないって、本当かも。
なんて、呑気な私だった。