月が綺麗ですね。
5.帰り道で告白。
『………出てこいよ』
『好きです!付き合ってください!!』
『電柱の陰から出てくんなよストーカーかお前は!』
却下。
――――「ストーカーではないよ」
「人の帰り道を尾行するとか、立派なストーカーだろ」
「帰り道で呼び止めて告白しようと思ってたんだけど、どのタイミングで行こうかなって迷ってるうちにここまで来ちゃった」
て、てへ。
という顔をしたら、全力で嫌そうな顔をされた。
「椎名くん歩くの速いんだもん…」
隠れていたから電柱から椎名くんにゆっくり近寄る。
「はぁ…本当お前は……」
「でも、退屈してないでしょ?」
呆れ顔の椎名くんの顔を覗き込む。
彼は一瞬驚いたような顔をしたあと、妙に納得した面持ちで言った。
「そりゃ、まぁ……してないかもしれねぇな」
「私と付きあえば、毎日が退屈知らずだよ?」
「テレフォンショッピングみたいに自分をPRするなよ…ったく、こんな時間まで付いて来やがって、帰れ」
言われて時計を見れば、もう18:30を回っていた。
今日は仕方ないか……
「はぁーい…帰りまーす……」
さすがの私も疲れたし、ネタも尽きた。
帰ろうと踵を返しかけた時。
「ちょっと待て」
「え…?」
「はぁ……どっち方面だ」
「え?私の、家?」
「今はそういうことになるんじゃないか?」
少し気だるげに私を見つめたその瞳は、相変わらず綺麗な榛色。
「えーっと……」
何故かこのタイミングで見とれてしまってから、すぐに思考を呼び戻す。
「上りの電車の、一駅向こう」
「わかった」
そう言うと、さっきと逆方向に歩きだす椎名くん。
え、そっち、駅……
混乱する私はその場から動けない。
すると椎名くんが振り返った。
「早くしろよ」
「え、うん……」
慌てて追いついて、隣に並んだ。
これって、送ってくれるってことで、合ってる…よね?
時々チラチラ見るけど、一切目線が交わることはない。
少し、いやかなり不安になっていた時。
「あれ、朔……?」
突然前方から綺麗な女の人が近づいてきた。