月が綺麗ですね。



✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱



「お、お邪魔します」

「環那ちゃーんっ、遠慮せず、上がって上がって!」

「テンション高すぎ」

「あんたが人連れてるなんて、めちゃくちゃレアなんだもの~。あ、ちょっと片付けるから、玄関で待っててくれる~?ごめんね」


私たちを置いて、リビングと思しき扉に消えた月子さんの背中を見送ると、隣に立つその人を見上げてみた。


「そう、なんだ?」

「ん?あぁ」


何かと女子に囲まれる椎名くん、本人は浮かない顔をしていても、いつも引っ付いてる娘が何人かいらっしゃる。

一緒に帰ったりはないってことかな?


「しっかし、お前は本当に…トラブルメイカーか?疫病神か??」

「もう、酷いな…椎名くんが送ってくれようとしたからでしょ~?」


人に押し付けないでよっ

少し首を傾げながら睨むと、彼は少し怯んだ。


「それは…まぁ、そうかも……って、別に送ろうとしてたわけじゃねぇよ。たまたまそっちに用があっただけだ」

「あっ、今認めた」

「だから、ちげぇって」

「またまたぁ~、照れちゃってぇ~」


からかいを含んだ声でツッコんだ瞬間、ポンと椎名くんの大きな手が私の頭の上に乗った。

突然のことに少し胸が高なった。

……のに、


「あんま調子乗ると握りつぶすぞチビ」

「怖い怖い怖い!!!」


頭上の手が少しずつ私の頭蓋骨を圧迫してきた。


「いやいやいやいや、ちょっと待たれよ!!私!女の子!!」


少しするとパッと離れた。

その瞬間、開放された頭を自分の手で押さえて、椎名くんから離れて振り返る。


「何するの!私!仮にも女の子だよ!?」

「いい位置に頭があるのが悪いんだよ」

「チビじゃありませんけど私!!」

「じゃあ何センチだよ?」

「ひゃ、155センチ……」

「俺、179センチ」

「ムッカつく!!!!」


勝ち誇った顔しやがって!!くそぉ!!

男女差として仕方がないとは分かっていても、それとは別にムカつく…!!



< 19 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop