月が綺麗ですね。
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「お、お邪魔します」
「環那ちゃーんっ、遠慮せず、上がって上がって!」
「テンション高すぎ」
「あんたが人連れてるなんて、めちゃくちゃレアなんだもの~。あ、ちょっと片付けるから、玄関で待っててくれる~?ごめんね」
私たちを置いて、リビングと思しき扉に消えた月子さんの背中を見送ると、隣に立つその人を見上げてみた。
「そう、なんだ?」
「ん?あぁ」
何かと女子に囲まれる椎名くん、本人は浮かない顔をしていても、いつも引っ付いてる娘が何人かいらっしゃる。
一緒に帰ったりはないってことかな?
「しっかし、お前は本当に…トラブルメイカーか?疫病神か??」
「もう、酷いな…椎名くんが送ってくれようとしたからでしょ~?」
人に押し付けないでよっ
少し首を傾げながら睨むと、彼は少し怯んだ。
「それは…まぁ、そうかも……って、別に送ろうとしてたわけじゃねぇよ。たまたまそっちに用があっただけだ」
「あっ、今認めた」
「だから、ちげぇって」
「またまたぁ~、照れちゃってぇ~」
からかいを含んだ声でツッコんだ瞬間、ポンと椎名くんの大きな手が私の頭の上に乗った。
突然のことに少し胸が高なった。
……のに、
「あんま調子乗ると握りつぶすぞチビ」
「怖い怖い怖い!!!」
頭上の手が少しずつ私の頭蓋骨を圧迫してきた。
「いやいやいやいや、ちょっと待たれよ!!私!女の子!!」
少しするとパッと離れた。
その瞬間、開放された頭を自分の手で押さえて、椎名くんから離れて振り返る。
「何するの!私!仮にも女の子だよ!?」
「いい位置に頭があるのが悪いんだよ」
「チビじゃありませんけど私!!」
「じゃあ何センチだよ?」
「ひゃ、155センチ……」
「俺、179センチ」
「ムッカつく!!!!」
勝ち誇った顔しやがって!!くそぉ!!
男女差として仕方がないとは分かっていても、それとは別にムカつく…!!