月が綺麗ですね。




「はいはい二人とも、仲がいいのはよろしいことだけど、準備が出来たわよ」

「遅えよクソババア」

「あなただけ入らなくていいわ」


月子さんは、にっこり、とても素敵な笑顔でエゲツないことを言う。

まぁ、これは椎名くんの自業自得かなぁ…あはは。ウケる。


「なんでコイツは良くて、この家の住人の俺はダメなんだよふざけんなクソババア」

「ささっ、環那ちゃん入って~」


そして極めつけのガン無視である。

なんと言うか…仲がいいのか悪いのか……

苦笑いでリビングに入った瞬間。

いい匂いがした。

入って左側がシステムキッチン。
お洒落にカウンター席もある。

真ん前が4人がけのダイニングテーブル。

右側がリビングなようだ。

すっきりとしていて、シックな空間。


「もう少しで出来るから、そこら辺のソファにでも座って待ってて?」

「あ、はい」


月子さんの視線の先には、ゆったりと座れそうなローソファがあった。

その前にはローテーブル、そして何インチか分からないほど大きなテレビ。

なんと言うか…完璧。

さすが椎名くんの家…抜け目ない…

外観も、デザイナーズ物件みたいな感じだったし…


私、場違い感が半端なくないですか…?


「おい、邪魔だ早く座れ」


いつもの如く暴言を吐かれ、意識が戻った。

慌ててソファに座ると、心地良い硬さだった。

柔らかすぎず、硬すぎず、程よく体が沈む。

少し間隔を開けて、彼もソファに座ると、長い足を組んだ。

モデルみたいに綺麗。



月子さんの登場で、椎名くんの新たな一面が見られた気がする。

動揺する椎名くんなんて、学校じゃただの一度も見たことないし……

いつだってダルそうに全てを完璧にこなす、スポーツ万能、学年主席のイケメン王子。

……もしかして、本当は人間じゃないんじゃ…?


「俺は人間だぞ」

「えっ、今声に出して……!?」

「バッチリ言ってた」

「もしかしてテレパシーまで…!?!?」

「いい加減にしろよお前…」

「あなたたち本当に付き合ってないの…?」


月子さんは最早呆れ気味で首を傾げていた。

付き合えてたらこんなに回りくどい関係にならずに済んだんですけどね……



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