月が綺麗ですね。
雪絵さんの手を離れられる年齢になったと、もう安心して、自分のことに専念してもらえるように。
そして私は6月の球技大会で、椎名くんに一目惚れして、彼に恋することを決めた。
その時は、告白するなんて考えてもいなかった。
とにかく、好きな人がいるという状況が私には必要だった。
……悪く言えば、誰でも良かったのかも知れない。
だから、昨日の帰り道、椎名くんが『どうせ、俺じゃなくても』そう言った時、すごく、刺さった。
でも、最初のうちだけだった。
ずっとあなたを見るようになって、いつの間にか、それが癖になって。
いつの間にか、私、本当にあなたを好きになっていた。
一年生の時の文化祭、人通りの少ない廊下で、迷子にでもなったのか泣きじゃくる女の子の頭を撫でていた椎名くん。
ある朝登校した時、椎名くんは下駄箱に入っていたラブレターを裏返して見て、そのまま隣の人の下駄箱に入れていた。
椎名くんが去った後、下駄箱を開けて確認してみたら、宛名が椎名くんじゃなかった。
体育祭のとき、他の人が落としたペットボトルをゴミ箱に入れていた。
図書室で、勉強途中で寝てしまった生徒が落とした赤ペンを拾っていた。