月が綺麗ですね。
その日から、先輩と俺は行動を共にするようになった。
一緒に帰ったり、一緒にお昼を食べたり、涌谷先輩のいたところにそっくりそのまま置かれた俺は、馬鹿みたいに、好きな人の隣にいられる幸せを感じていた。
ものすごく不安定だった。
彼女と笑いあった後に一人になって、はっとする。
仮初めの幸せに溺れる自分が憐れだった。
それでも、彼女に流されるまま、日々は流れていく。
俺たちに注がれる好奇と興味が交じる視線、そして、涌谷先輩の視線を感じながらも俺は、仮初めの幸せを手放すことが出来なかった。
そしていつの間にか、俺が悠華先輩をそそのかした、という噂が学校中に広まっていた。
そこからは、簡単だった。
全てが馬鹿みたいに簡単に壊れていった。
ロッカーに入れていた教科書類は、朝学校に来れば無くなっていて、学校中を探しまわった結果、見つけたのはプールだった。
少し目を離した隙に、バッシュはズタズタに裂かれていた。
他にもたくさん、いろんな物を傷つけられた。
犯人なんて、言うまでもない。
でも先輩は、決して俺自身を傷つけることはなかった。
傷つけられた物を見るたびに、先輩を裏切った自分を責めた。
でも、小学生のときイジメられた時の何倍も苦しかった。
だってこれは、俺の犯した罪への罰だから。
どんなに傷ついても自業自得というヤツで。
きっと先輩も俺もボロボロだった。