月が綺麗ですね。
そして俺はついにバスケも取り上げられる。
騒動が本格化してくると、涌谷先輩を含む先輩方はまず俺をマネージャー扱いし始めた。
『おいマネージャー』
『っ!?』
先輩の一人がそう言うと、次々に俺に空になったスクイズを投げつけた。
中にはまだまだ入っている物もあって、俺の顔や練習着にかかった。
乾いた音が床に散らばる。
『補充しとけよ~?』
『俺はっ、マネージャーじゃ…っ』
『は?お前に選手名乗る資格あると思ってんのかよ』
『馬鹿だから分かんないんじゃね??』
『おいお前ら酷すぎだろ~~』
そう言ってゲラゲラ嘲笑う先輩たち。
顎から一雫がたれた。
『お前なんかにバスケやる資格ねぇよ』
最後に涌谷先輩がそう吐き捨てて、去っていった。
ボールに触ることさえ出来ない日だってあった。
コーチも監督も、とにかく結果さえ出してくれたらそれでいいという実力主義で、インターハイベスト8の成績を出した先輩方に何も口出ししなかった。
俺がいなくても結果は出せる、俺はこのチームには必要ない。
それでも俺は、バスケがしたかった。
だから、させてくれと頼んだ。
『あぁ、いいぞ……ただし、3on1な?』
俺は、涌谷先輩含むエース3人に打ちのめされた。
そしてたまに、
『わりぃ、手滑ったわ』
と「悪い」なんて欠片も思っていないような声でボールをぶつけられた。
その日からそれは毎日のように続いた。
バスケはもう、楽しいものじゃなくなった。
俺を傷つけるものに変わったんだ―――――