月が綺麗ですね。
「なんで起こしてくれなかったの瑠璃子!!」
確かに、そういうことをする子じゃないけどさ…!!
仮にも告白だぜ…!?
一応女子の一大イベントだぜ…!?
どんなことを思っても、時間が巻き戻ることがないのは分かってるけど、それでも。
私のクラスの教室は、北校舎の東の端。
屋上は、南校舎。
渡り廊下で、南校舎に移る。
そして、目の前の階段を駆け上がった先に屋上への扉がある。
時計を見れば、あと2分。
なんで屋上になんて指定したんだ私…!!
地味に遠いし、体力保たないじゃないか…!!
ロケーションがいいからと、そんな理由で選んだ考えなしの自分が憎い。
約束の時間まであと1分。
屋上の扉が見えた。
でも、いざ目の前に来ると、そのドアノブに手を掛けるのには、少しだけ勇気が必要だった。
そして、開けた。
5月の風と、夕暮れが、私を包む。
眩しくて目を閉じた。
そっと、目を開けると、椎名くんが、いた。