月が綺麗ですね。




「なんで起こしてくれなかったの瑠璃子!!」


確かに、そういうことをする子じゃないけどさ…!!

仮にも告白だぜ…!?

一応女子の一大イベントだぜ…!?


どんなことを思っても、時間が巻き戻ることがないのは分かってるけど、それでも。


私のクラスの教室は、北校舎の東の端。

屋上は、南校舎。


渡り廊下で、南校舎に移る。

そして、目の前の階段を駆け上がった先に屋上への扉がある。


時計を見れば、あと2分。


なんで屋上になんて指定したんだ私…!!

地味に遠いし、体力保たないじゃないか…!!


ロケーションがいいからと、そんな理由で選んだ考えなしの自分が憎い。


約束の時間まであと1分。


屋上の扉が見えた。


でも、いざ目の前に来ると、そのドアノブに手を掛けるのには、少しだけ勇気が必要だった。


そして、開けた。


5月の風と、夕暮れが、私を包む。

眩しくて目を閉じた。


そっと、目を開けると、椎名くんが、いた。




< 4 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop