月が綺麗ですね。
「迷惑っで、あんださっき、ありがとうって言っだじゃないっ!!」
「あははっ、変な声」
こんの…!!
仕返しをしようと右手を伸ばしたら、パシッと掴まれた。
動かそうとも、ビクともしない。
「ん゛~~!!」
強く睨んだら、ハッとしたように椎名くんは手を離した。
そして、鼻も開放された。
少し痛む鼻を擦ると、椎名くんはため息を吐いてそっぽを向いた。
「……お前、細すぎねぇ?」
「は…?」
突然何よ。
というか、なんか挙動不審?
「腕、見たところ足もほっせぇし、力弱すぎ」
「昔から太りにくい体質なだけだし、そんなに弱くない」
「…なんか女っぽくて調子狂う」
そりゃまぁ……女だし?
え、何が言いたいの椎名くん。
よほど不思議そうな顔をしていたのだろう。
私の表情から察したのか、彼は、うなじをガリガリ掻いた。
「あぁ~もう何でもねぇよ!」
「…?、そう」
その仕草をどこかで見たことがあるような。
デジャヴを感じたけど、結局思い出せずに、もう一度空を眺めた。
―――キーンコーンカーンコーーーン……
「これは…」
「昼休みか」
ぐぅぅぅ~~~~
その瞬間、私のお腹が大音量で鳴った。
ぶふっ、と、吹き出す音が聞こえて、顔が徐々に熱を持つ。
「おっ前…っ、どんだけ、腹減ってんだよっ」
そんなに笑う!?
デリカシーって物が無いのかこの男には…!?
「もう、うるさい!!」
私が睨みつけて叫んだ瞬間。
ぎゅるるるぅぅぅぅ~~~
私よりも大音量の音が聞こえた。
まさか、、、ぷっっ
堪え切れずに吹いてしまった。
「よっ、よっぽどお腹が空いてるのねぇ?椎名くん…っ??」
「ふっ、ふざっけんな!お前ほどじゃねぇし」
「はぁ?明らかに私より大きな音だったけどぉ??」
「耳おかしいんじゃねぇの??」
そこで、音の小ささで自身の威厳を保つという、馬鹿馬鹿しい現状に気がついた。
「……はぁ、まぁ確かにお腹は空いたよね」
「だな……」
「ごめん、教室にお弁当もろとも置いてきた」