月が綺麗ですね。
すると、辛うじて持っていたスマホがスカートのポケットの中で震えた。
画面を見ると、
「あ、瑠璃子……」
何の説明もせずに置き去りにしてきた親友からメッセージが来ていた。
やっばい。
いつも、瑠璃子が私を無視することはあっても、私が瑠璃子を無視することはなかった。
状況が状況なだけに、しょうがない気もするけど。
罪悪感のような物がしこりになって、存在を主張する。
不安を抱えながらメッセを開くと、泣きそうになった。
〈何か被害には会ってない?今どこにいるの?〉
怒っているんじゃないか、なんて、馬鹿みたいな心配だった。
涙ぐんでしまって、慌てて袖でゴシゴシ目を擦って頭を横に振った。
これ以上心配をかけてはダメだ。
〈ちょっと見つかりそうになったけど大丈夫だったよ!椎名くんと屋上にいる〉
と返信したら、秒速で返ってきた。
〈そのまま待ってなさい。そいつ絶対シメるから〉
し、シメ!?
瑠璃子さんめっちゃ殺気立ってない!?
〈わ、わかりました……〉
一応、そうメッセを返した。
え、大丈夫かなこれ……?
大丈夫だよね、うん、大丈夫大丈夫。
無理矢理自分を納得させ、椎名くんに声をかけた。
「し、椎名くん。これから私の親友が来るけど……」
「けど?」
何て言ったらいいのこれ…?
『襲うかも知れないから気をつけて』?
いや、直球過ぎるかも…
でも、警戒を促すってことで最適?
混乱し過ぎて固まっていたら、バーーンと屋上の扉が開かれた。
「環那!!」
「る、瑠璃子!」
予想通り、そこには瑠璃子の姿があった。
でも、続いて入ってきた人影は意外だった。
「悠介くん!?」
「よ、久しぶりだな望月」
瑠璃子の彼氏、悠介くんは片手を上げると緩く微笑んだ。