月が綺麗ですね。
〈風邪でも引いた?〉
私が体調を崩したときは、瑠璃子はいつもこうしてメッセージをくれる。
そして学校が終わるとお見舞いに来てくれる。
普段が塩対応なだけに、こういう時はとことん優しく感じて感動がヤバい。
〈37.8℃あったので、休んじゃいました〉
〈いつものでいい?〉
〈いつもいつもありがとう(;_;) ヨーグルトとポカリと冷えピタとフルーツゼリー、よろしくお願いします(;_;)〉
〈バカは風邪引かないって言うけど、環那は例外だよね。了解〉
文面は素っ気ないし、失礼なことも言ってるような気がするけど、これが私の愛する瑠璃子様である。
私はいい人たちに囲まれて幸せです神様…
ダルい体を持ち上げて、冷蔵庫のミネラルウォーターを飲むと、雪絵さんが作ってくれたお粥を温めてもくもくと食べて、薬を飲んで布団に戻った。
夕方になれば、瑠璃子が来てくれる。
そう思って目を閉じても、なかなか寝付けない。
いつもより温度の高いため息を吐いた。
目を閉じると聴覚が鋭くなるのか、やけに雨音がよく聞こえる。
梅雨特有のジメっとした空気を、肌で感じる。
雨降る世界に一人閉じ込められたようで、自分をぎゅっと抱きしめた。
言い様のない不安が私を支配して、心を染め上げていく。
――――……ひとりぼっちなのは、今に始まったことじゃないじゃん。
お父さんが居なくなって、お母さんが居なくなって……
やっぱりこういう時に思う。
居たらいいのに、って。
ずっと一緒に居たかったよ、お父さん、お母さん……
世界のどこを探したって、代わりなんていない。
わかってるよ。
そんなの、もうわかってる。
涙なんて枯れるほど流した。
それなのに、どうして、
「止まんないの……」
泣くことに意味なんてない。
それも、もうわかってる。
わかってるよ……―――――――