月が綺麗ですね。
私が入ってきたことに気づいたのか、ゆっくりと振り返る。
その瞬間に、栗色の髪が風になびいて、輝いた。
綺麗な2つの瞳が、私を写している。
桜色の唇が、「あ」と、開いた。
鼓動が、鼓動が速い。
それは、走ってきたからなのか、それとも……
「あっ、待たせてごめんなさい!」
彼は、私が今朝下駄箱に入れた手紙を目線の高さに持ってくると。
「これ、あんた?」
無表情に聞いてきた。
「あ、うん」
「そう……で?」
「え、っと………」
ま、マズい。
告白することは決めてあったけど、何て告白するかは考えてなかった。
この際、スタンダードに行こう。
あの、小説とかで聞くような。
ごちゃごちゃ考えたって、何にもならない。
思考を止める、息を吸い込んだ。
「す、好きです!付き合ってください!!」
………………あれ?
何も返ってこない??
ぎゅっと瞑っていた目をそろーっと開けると。
少し考えこむ様子の椎名くんが見えた。
「ん~…つまんないから、却下」
「え……はぁ!?」
何だって!?
つ、つまんない!?
一体何が起こってるの!?
「つ、つまんないって、どういうこと、でしょうか……!?」
「そのまんま、つまんない」
「そのまんまって……えぇ??」
え、つまり、フラレたってこと?
そういうことなの?
いや、今まで何回か告白してきた私でもこんなフラレ方初めてだよ?
え、私、告白がつまんないって理由でフラレたワケ?
「そんなのある~…?」
「話はそれだけ? 俺、帰るから」
「ちょ、ちょっと待って!」
「なに? まだ何かあんの?」
いや、無いけどさ!
このままじゃ、引き下がれない。
諦めきれない。
この時、私の闘士に火がついた。
「じゃ、じゃあ、面白い告白ができたら、付き合ってくれるの?」
「は?」
「質問してるんだけど!」
「いや、意味わかんねぇから」
人のこと言えないでしょう!
「ねぇ、付き合ってくれるの?」
「……はぁ」
呆れたようなため息を吐いた椎名くん。
でも、少しずつニヤリと微笑みが浮かんだ。
「あぁ、いいだろう。俺を納得させる面白い告白が出来たら、付き合ってやるよ」
ちょっと、いやかなり、イラッとした。
何様ですか……!?
もう、絶対負けないんだから!!!
「覚えてろよぉ!!!!」
と、口悪く言葉を投げつけると、走って屋上を後にした。