シチリアーノは泡沫に
「そう、あそこに一人でいると思うわ」

祐子さんは例の笑みを浮かべながら、何故か“一人”という単語を強調して言った。


「岩に隠れれば何でもできるわねぇ~」



どうしてそういう方向に持っていくんだ、この人は。


「あの、別に僕はそんなつもりじゃないです」

「今日はお赤飯ねぇ~♪」



……聞いてないし。


祐子さんは鼻歌混じりで店の奥に消えていった。

その時祐子さんが
「若いっていいわねぇ。私たちもたまには外でしたいわ~」
なんて呟いたのは、

聞かなかったことにしよう。



皐さんのあとを追って行ったら、祐子さんのよからぬ妄想が炸裂してしまいそうで嫌だったが、結局僕は崖に向かうことにした。

様子を少し覗くくらいでいいと思ったからだ。


なんか僕、ストーカーみたいじゃないか?



ぶつぶつと呟きながら歩いていたら、いつの間にか皐さんの後ろまで来ていた。
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