シチリアーノは泡沫に
さつき荘にもどると、本当にお赤飯が用意してあった。


「なんだ今日はなんの祝いだ?」

豊さんが夕食の席につきながら尋ねた。

すると祐子さんが豊さんに何やら耳打ちし始めた。



何を言っているのか想像したくもないのに、2人の顔がニヤケていくのを見ていると嫌でも思い知らされる。
くそぅ、エロ夫婦め……


「そうかそうか、そりゃめでたい」

豊さんが何故か満足そうに笑って言った。


「あの、祐子さんが言ったようなことはしてないですよ」

半ば諦め気味で反論してみた。


「でも、キスくらいはしたんでしょ?」

「してませんよ」

「ええー、だって抱き締めてたじゃない。こう、後ろからギュッと」

身ぶり手振りを添えながらうっとりしたように祐子さんが言った。

僕はお赤飯を吹き出しそうになった。

なんで知ってるんだ!?


僕が慌てて崖の方を見ると、先ほど皐さんが座っていたところは岩で隠れて見えなかった。

まさかこの人覗きに来たんじゃ……
< 15 / 40 >

この作品をシェア

pagetop