シチリアーノは泡沫に
「夕暮れ時の海辺で……はぁロマンチックねぇ。ね、あなた、私たちもよく海でデートしたわよね」


「祐子は積極的だったからなあ。砂浜で押し倒された時は…」

んんっと皐さんがわざとらしく咳き込んで、怪しい雲行きの会話を途絶えさせた。

やっぱり、普通は親のそういう話聞きたくないよな。


「お父さんお母さん、ご飯が不味くなる」


……ああ、そっちね。


「あら、ごめんね。せっかく皐とゴロすけくんの話だったのに」

え?その話に戻すの!?

僕は焦った。
何だかんだで話がそれてくれて安心していたんだ。

だって僕が皐さんに抱きついたのは事実だから、反論の余地がない。


「ゴロすけくんって意外と手が早いのねぇ」

祐子さんが感心したように言った。

そんなことで感心されても嬉しくないし、僕は自他ともに認める極度のオクテだ。
会って一日の女性に抱きつくなんてあり得ない。


なんだか、分からない。
内臓がモヤモヤする。



やっぱり僕は欲求不満の変態痴漢ヤロウだったのか……?
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