シチリアーノは泡沫に
その肌が橙色なのを不思議に思って腕の先を見ると、空が真っ赤に染まっていた。

トマトケチャップを派手にこぼしてしまったようなその染みは、いくら洗濯しても落ちなそうだった。

紫色の雲が控えめに浮かんでいる。

こころなしか、別れを告げているように見えた。

地上よ、さようなら。


そして、そんなすべてを海は受け止めていた。


不気味なほどの美しさだった。
僕も皐さんも包み込んでしまいそうな夕焼けの赤色が、ゆっくりと水平線の向こうへ帰っていく。


「僕もいつかあの海の彼方へ消えていくときがくるのかな」

僕が情景に浸っていると、皐さんの肩が小刻みに震え出した。
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