シチリアーノは泡沫に
え、泣いてる?


「さ、皐さん?」


「……っふ…」

押し殺したような声まで聞こえてきて、僕はかなり焦った。


「どうし…」
「っははは!五郎クサ過ぎ!うざー!」


僕は急に聞こえた笑い声に拍子抜けしたが、皐さんが息も絶え絶えに笑い続けるからだんだん恥ずかしくなってきた。


「な、なんか変な空だな!台風でもくるのかなあ」

苦し紛れにそう言ってみたが、皐さんの笑いを止めることはできなかった。



「はぁ……面白かった。じゃあ海入ろう」


心行くまで笑ったあと、彼女は今度はそんなことを言い出した。


「え、やだよ。濡れるし」

「なに女々しいこといってるの?男ならダイブしなさい!」


このまま躊躇していると海の中に突き飛ばされそうだと思ったので、僕は大人しく皐さんを下ろした。
すると彼女は嬉しそうに笑って僕の手を引いた。


「うりゃ」

「ぶっ!!」

海に入るとすぐ、皐さんが水を足で蹴って僕の顔面にかけてきた。
僕は「なにするんだよ~」と言いながら彼女にも水をかけた。

……なんていう度胸はなく、懸命に皐さんの攻撃から逃げ回っていた。

彼女はそんな僕を楽しそうにいたぶった。
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