シチリアーノは泡沫に
「ねぇ五郎」

「ぶへっ、なに?」

口の中がしょっぱくて苦い。


「いつまで私のことさん付けで呼ぶの?」

皐さんがなにか企んだように僕に言った。


なんでって、呼び捨てにしたら殴られそうな気がしたからだ。
もしかして、今更だけど僕は皐さんのことを呼び捨てで呼んでいいのかな。


「皐、でいいの?」

「さつきサマと呼びなさい」


僕は転けそうになったが、下は海水なのでなんとか途中でこらえた。


「うそ。皐でいいから」

皐さ……皐は舌を出して悪戯っ子のように笑った。


「……うん」


僕はなんだか皐の仕草一つ一つに目を奪われてしまう。

特に彼女の笑い方は、その…すごく、可愛い。

そんなことを考えていた僕は、夕日に紛れて熱い顔を隠した。
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