シチリアーノは泡沫に
「ねぇあなた、びしょ濡れで帰ってきたわよ」

「そうだな、しかも二人して」


ボソボソにやにやと祐子さんと豊さんが、内緒話とは言いがたい声量で話している。


……僕の目の前で。

聞こえてるんだよ!


「これは、さっ皐…が」


しまった。

言い慣れていないものだから“皐”のところで声が裏返ってしまった!


「“皐”ですって」

「急になぁ……」


違うって!

僕には手に終えないと思って皐に助けを求めて目を向けたが、皐はいじられている僕を美島夫婦と同じ顔で見ていた。

そうだ、彼女も美島家の一員だった。


「海の中で何をしてたのかしら」

祐子さんが口元をつり上げていった。

「何もしてませんって!!」

「ふふふ。照れちゃって」


皐は涼しい顔をしているし、どうしていつも僕ばっかり……
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